5歳から始まった私の音楽人生は、ひとえに素敵な素晴らしい先生方との出会いであったと思います。
幼少期の先生ご夫妻。
レッスンが楽しくてレッスン中でも笑い転げてしまう私を見て、「笑い過ぎて蓋に鼻をぶつけてしまう生徒さんが多いのよ」とおっしゃって急いでピアノの蓋に手をかけられて心配そうな顔をされる先生。そうやっていつも見守って下さいました。
小学校高学年からの先生。
いつもいつも内容の濃いレッスンを頂き、帰りの市電では楽譜を見ながら復習。市電で30分ほどの道のりでも足りないくらいで、残りの復習はJRの電車の中まで持ち越し。
その内容の濃さから「音楽を洞察する」こと、それが楽しいことなんだと知りました。コンクールの経験も沢山頂きました。親身になって真摯に考えて下さるレッスンを頂きました。
音楽教室の先生方にも大変お世話になりました。
当時は土曜の午前も学校があり、遠方でしたので日曜日にしか通えない私。その日曜日に同じく遠方からの生徒さんと一緒に授業をして頂いていました。今思うと頭が下がります。
聴音、楽典など、音楽の基礎を教えて頂きました。御縁を頂き、現在、同じ教室の講師をさせて頂いております。
大学で師事した先生。
後期試験で緊張してリピート記号がないのに同じ曲を二回も弾いてしまった時、私から先生にご連絡をするよりも先にお電話を頂き、落ち込んでいる私を明るくユーモアを織り交ぜながら励まして頂きました。
門下生の会では私たちに美味しい手料理を振る舞って下さったり(本当に本当に美味しい!)、語学が堪能で何ヵ国語もお話しになられる先生。他の先生や海外でのレッスンも積極的に勧めて下さり、おかげで留学という新たなステップを踏むことができました。
留学先の先生のレッスンはいつも先生のピアノコンサートのようでした。
お弾きになれない曲がない!色々な曲に取り組んでいる全ての門下生に対し、「ここはこう、ここはこんな感じ!」と全て弾いて下さります。
色々な時代の鍵盤楽器を弾かれ、先生の音楽に沢山触れることが出来た本当に貴重な時間でした。
今の私の音楽を聴く耳の基本となっていることを改めて感じます。
研究をされている先生のカバンにはいつも音楽院の図書館から借りた沢山の本が…。「図書館に本がないと思ったら家にあったんだよね!せっせと僕は本を家に運んでいるんだよ!」とウィンク。温かいユーモアたっぷりの先生でした。
大量の楽譜を数個のスーツケースに詰め、世界各国に演奏やレッスンに出かけられた大学の先輩でもある先生からは、室内楽を中心としたレッスンを頂きました。
先生のお宅である運河に浮かぶボートハウスで船上レッスン。たまに体もピアノもフワッと揺れると、「大きな船が通ったようです」と冷静な先生。
声楽を含む全ての楽器奏者のレッスンをされ、作曲家の音楽的言語、スタイルをとことん凄まじいまでに追求(各作曲家の言語はもちろんマスター)する理論的かつ情熱的なレッスン、パワー、その生き方…。日本人はもとより、外国人も皆尊敬していました。
これらはほんの一部ですが、ここでは書き切れないほど沢山の先生方にお世話になりました。「先生」というものが人に与える力の大きさ、深さを身をもって感じております。大学を卒業してからも交流して頂いている先生も多く、このような繋がりを本当にうれしく思います。
自分が得てきた経験を少しでも生徒さんにお伝えしていくことが出来たら…。自分自身も演奏の勉強を続けながら、そのような思いでレッスンに取り組んでおります。
西條 暁